2019年11月15日

物件取得手続きの流れ

情報を十分に集め、実際に購入する物件を決めましたら、いよいよ取得手続きに入ることになります。ここではコンドミニアムや土地を取得する一般的な手続きについて書いていきます。

いずれも、物件の調査、購入物件の決定、売主の本人確認など、必要な情報収集が終わった段階を想定しています。

 

 

コンドミニアムの取得手続き

手付金

まず、手付契約を締結し、手付金を送金します。そして、売買契約を結び、手付金を支払うという流れになります。

 

手付金とは、契約締結時に売主に一旦預けて、売買代金の支払い時に、売主から返還してもらうものを言います。

しかし、その都度その手続きをするのは煩雑になりますので、手付金を残りの支払いに売買代金の一部として充当するなどが行われることがあります。

注意点として、海外への送金となりますので、更に付随費用、手数料などがかかる場合もありますので、不慣れな方は金融機関などに確認して手続きした方が良いかもしれません。

 

売買代金の支払い

売買契約を結びましたら、契約内容に基づいて代金の支払いを行います。

コンドミニアムの代金は、デベロッパーが開設した売買代金支払用の商業銀行機関口座に支払います。

 

物件の引き渡しへ

所有権移転登記手続が完了し、売買代金の分割金の支払い、物件の引き渡しとなります。

物件取得手続きの流れ

瑕疵担保期間

物件には瑕疵担保期間が設定されています。

瑕疵担保責任とは、売買などの契約で、その物件などに通常の注意では発見できない欠陥がある場合に、売り主などが負うべき賠償責任の事です。瑕疵とは、キズや欠陥という意味があります。

 

買主には、追完請求権、修繕請求権、代金減額請求権、解除権などが認められています。

追完請求権とは、引き渡された物件などの種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しない場合に、目的物の補修、代替物の引渡し又は不足分の引渡しを請求する権利の事です。

解除権とは、瑕疵が理由で契約の目的を達成する事が出来ない場合に認められます。

 

瑕疵担保期間とはその及ぶ期間の事を言います。何か問題があれば、この期間のうちに対処することが望ましいでしょう。上記の権利は、買主が歌詞や損害の事実を知る、知るべきであった時から1年以内に行使しないといけない事になっています。

 

〈補足〉日本との違い

カンボジアの瑕疵担保期間は、日本に比べかなり短く設定されています。

加えて、建築基準が日本よりかなり甘く、住宅の品質確保の促進などに関する法律が整備されておりません。これらの状況から、カンボジアでは不動産購入時の瑕疵に関するリスクが高いのが実情です。

日本では新築住宅の構造耐力上主要な部分などは10年間瑕疵担保責任が認められています。土地に関しても、契約上で土地の工作物や地盤について5年または10年の瑕疵担保特約が認められる場合も多いです。

しかし、カンボジアでは土地工作物の建築についても1年であり、特約が設けられる事は殆どありません。

 

 

残りの代金の支払い

購入時に一括で支払いするのが難しい場合には分割払いの契約となる場合がありますが、最終の売買代金分割金の支払いを終える事で、ようやく全ての手続きが終わることになります。

ローンを組んだものの、途中で支払うことが出来なくなってしまった、という事が無いように資金繰りにも注意が必要ですね。

 

〈補足〉支払いスケジュールについて

コンドミニアムの売買代金のスケジュールは契約によって異なります。ただ、経済財務省というコンドミニアムの開発許可の監督官庁は、2016年に省令を公布し、分割金額の上限額に関する規制を行いました。これによりデベロッパーは支払いスケジュールを次の通り遵守することになっています。

 

以下の全11回です。

①売買契約の締結時・・・10%まで

②杭打ち工事の完了時・・・10%まで

③構造工事の完了時・・・10%まで

④レンガ工事の完了時・・・10%まで

⑤屋根の設置工事の完了時・・・10%まで

⑥窓、ドアおよび電設工事の完了時・・・5%まで

⑦駐車場、出入り口、上下水道設置工事の完了時・・・5%まで

⑧建物全体の建築工事の完了時・・・25%まで

⑨建設現場閉鎖許可発行時・・・5%まで

⑩移転登記手続完了時・・・5%まで

⑪瑕疵担保期間満了時・・・5%まで

 

 

土地の取得手続き

土地の購入もコンドミニアムと似ています。

 

手付契約、手付金の送金、手付金の支払い、売買代金の支払い、所有権移転登記手続、最終の売買代金の支払い、物権引き渡し、となります。

 

手付金

一般的な流れをご紹介します。

まず、①売買契約時に10~数十%程度の手付金を支払い、②残額は所有権移転登記完了時に1回か、更に加えて2回程度に分けて支払います。

日本と異なるポイントは、所有権移転登記完了後に最終の支払いを行うケースが一般的だという所です。

 

支払方法

土地の場合、次のようなやり方が一般的に行われています。

 

 エスクロー口座の利用

エスクロー口座とは、売り手、買い手などの当事者が関与することができない口座の事です。取引の安全性を保証する目的でインターネットオークションなどでも使用されます。

 

例えば、売り手が物件を売り、買い手が購入したとします。このままでは、売り手は代金だけを受け取り、物件の引き渡しを拒む可能性があります。逆に、買い手は物件を受け取ったにも関わらず、支払いをしない可能性もあります。

こうした場合に備えて、安全に取引を行うためにエスクロー口座を利用するという訳です。

 

 残りの売買代金全額を所有権移転登記の開始時などに振り込みます。

 

 所有権移転登記完了を確認しましたら、銀行に買主口座へ振り込みの実行を指示します。

 

 

カンボジアへの支払いの注意点

手付金の送金の所でも触れましたが、送金先が海外である為にいくつか注意しなければならないポイントがあります。

カンボジアには外国為替法という、外国為替取引に関する法律があります。同法では、公認の銀行を通じた外国為替取引には制限が無いと規定されています。

つまり、送金者は通常、特別な届け出などを行う必要が無く、自由に送金する事が可能という事です。

しかし、送金額が高額な場合など、状況により必要な手続きが生じます。

 

高額な時

送金額が多額の場合、①銀行から送金の目的、②契約書関連書類の提出などを求められる場合があります。

1万米ドル以上の送金を行う場合には、公認銀行がカンボジア中央銀行に対して送金額をその都度届け出る事になっていますが、この場合には送金者が何らかの手続きを行う必要がありません。

1万米ドルも高額に見えますが、手続が必要になるのはそれよりもかなり高額な送金をする場合になります。大規模な不動産投資をする場合には、該当するかもしれません。

 

旅行者の場合

旅行者が、1万米ドル以上の支払い、国内通貨の持ち込みや持ち出しなどを行う場合には、税関へ申告が必要です。

 

 

売買代金の支払いについて

 

売買代金には、単純に物件の金額だけでなく、付随して様々な費用も含まれる場合があります。

 

例えば、移転登記手続、弁護士など専門家へ依頼する文筆などの費用、不動産取得に関連して生じる税金の支払い、振込手数料などがあります。

 

これらの費用負担を誰が担うのかについては、契約時の当事者間の合意によって決まりますので、一概には言えません。

 

いずれにしろ、契約時に漏れなく契約書に記載し、トラブルや余計な費用負担が生じないように注意が必要です。

不動産取得に関連する税金のうち、資産譲渡税は売買代金の4%にも上ります。高額になりますので、後にトラブルとならないよう、契約時に確認しましょう。

税金に関しては、別途まとめています。

 

所有権移転登記の手続きに関して

 

ここでは、改めて所有権移転登記の手続きについて詳しく見ていきます。

ポイントは、次の点です。

 

・法律と実務に乖離がある。

・実務担当者によっても違う。

 

つまり、実際に登記の手続きを行うには現地の法律を学ぶだけではなく、実務を進めていく中で登録・許可などの実務担当者とこまめに継続して連絡を取りながら行政手続きを行う必要があるのです。

事前の調査はもちろんの事、手続中も丁寧に調査や確認をする事が大切で、実際に手続き中に取り扱い方が変更になる場合もありますから、進捗状況に注意しましょう。

 

 

ここに一般的な流れをまとめておきますが、実際に行う場合には担当者に相談しながら進めるのが望ましいでしょう。

 

まず、一般的に行われている実務上のポイントです。法律として明文化されていませんが、一般的に行われている事です。

申請書類には、不動産の所有権移転登記手続きには、カンボジア人を法人の代表者や取締役とし、その署名や拇印の押印が必要となります。

ただ、この点も先に述べました通り、登記手続を担当する地籍所の職員によっても異なる可能性があります。

上記を踏まえて、売主・買主の両方が管轄の土地管理局において、担当者に対し申請用の売買契約書に署名と拇印の押印を行います。

 

必要書類の認証を受けます。

認証は日本における地方自治体の町のようなものである「コミューン」やサンカットの長から受ける事になります。

 

土地管理局のチェックを受けます。

必要書類のチェックを管轄の土地管理局で受けます。

 

地籍所に提出し、承認を受けます。

管轄の地籍所に必要書類を提出します。提出して、ちゃんと承認を受けないといけません。

 

資産譲渡税を支払います。

支払いは、「税務署」か「指定の金融機関」で行います。

 

地籍所に全ての必要書類を提出します。

ここで上述した認証などを受けた全ての書類を提出します。

 

権利証が交付されます。

ここまで来てようやく地籍所から晴れて権利証が交付されます。権利証には移転登記に関する情報が記入されています。

 

 

不動産取得時の様々な税金について

 

不動産を取得しますと様々な税金が生じます。主なものは「資産譲渡税」と「付加価値税」です。不動産は購入金額が高額になる場合が多いですから、不動産取得時の税金についても結構な額になります。しっかりとした認識を持っておくことが大切でしょう。

 

 

資産譲渡税

不動産の譲渡価値に対して税率4%が課されます。

ここでも法律と実務との乖離があります。納税者について、税法上では譲受人とされていますが、実際には売買の当事者の合意によって決まることも多いのです。よって、契約時に十分にどちらの負担となるのか確認することが非常に大切です。

 

納税の時期ですが、所有権移転登記手続申請と同時になります。それは、申請時に資産譲渡税相当額の印紙の添付が必要だからです。

 

〈補足〉ソフトタイトルによる所有権移転について

ハードタイトルが権利証であるのに対し、権利証以外の書面をソフトタイトルと呼びます。このソフトタイトルでの所有権移転については次の通りです。

 

・所有権移転のうち、最後の所有権移転のみ4%の資産譲渡税の対象となる。

・最後の譲受人が支払い義務を負う。

 

つまり、登記済みでなく登記の土地の売買も課税対象になるのです。

 

付加価値税

これは、コンドミニアムの譲渡について対象となる者です。税率は10%です。

一方、土地の場合は譲渡しても付加価値税の対象となりません。

不動産取得税

 

その他の注意点

 

・売買契約の成立要件

不動産の売買契約や贈与契約などは不動産所有権の移転を内容とする契約です。

この契約が成立する要件は、公正証書の作成となっています。

                       

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