情報収集と言いますと、不動産業者や不動産鑑定士などを思い浮かべると思います。
ただし、カンボジアには日系の不動産仲介業者は少なく、地元の業者が多く存在しています。
カンボジアでは、不動産仲介業や鑑定業は免許制であり、従業員が専門のライセンスを保有し、更に会社としても許可を得ている必要があります。
専門家ライセンス取得の要件は、
①犯罪歴が無い事
②関連する学士号などを有する事
③不動産に関する経験が6か月以上ある事
とされています。
近年では、不動産取引が過熱している状態を鑑み、不動産投資家保護のために、ライセンスや会社の許可の厳格化、行動規範の作成や省令の公布などが行われています。ライセンスや許可は毎年更新しなければならないことになっています。
コンドミニアムは、ホームページで確認することが出来ます。デベロッパーは販売前にモデルルームを設置する義務がありますので、実際にモデルルームに行って様子を見るのも有効です。
土地に関しては、日系不動産仲介業者の扱いは少なく好条件を見つけるのは難しいと言われています。見つけられたとしても、登記名義人ではない人物が土地取引の相手となる場合もあり、交渉の難しさもあります。
地域によっては、雨季には洪水、自然災害の発生などが起こり得ますので、実際に現場を訪れ、現地で聞き込みや調査を行い、雰囲気を把握することが海外不動産投資を行う上で大切です。
今まで折に触れて登記簿と権利証の確認が大切であると述べてきましたが、ここでより詳しく見ていきます。
ポルポト政権及び内戦によって登記簿が破棄されてしまったので、過去の関係が分からなくなってしまいました。そこで1979年以降の権利は無効とされました。
その後、2001年の土地法において、この法律の施行までに「5年間以上平穏かつ争いなく土地を占有した者」に対して不動産所有権を認める事になりました。
これにより不動産登記が行われ、土地所有権証明書が交付されたという流れです。
カンボジアでは2種類の方法があります。記載方法は異なりますが、機能的に違いはありません。
システマチックレジストレーションは,州知事や市長が登記の対象地域を決定し,村単位で行われる登記作成手続きです。
この手続きによって、土地登記簿へ登記され、所有権証明書が発行されます。
システマティックレジストレーションがまだ行われていない地域の特定の区画において、自身の土地を登記したい者が個別に申請することで行われる登記作成手続きの事です。
システマティックレジストレーションが行われるまでの暫定的な手続きともされており、不動産登記簿への登記が行われ、不動産占有権証明書が発行されます。
システマティックレジストレーション
登記されるもの・・・土地登記簿
発行されるもの・・・所有権証明書
スポラディックレジストレーション
登記されるもの・・・不動産登記簿
発行されるもの・・・不動産占有権証明書
2015円末時点で登記済みの土地区画数は、システマティックレジストレーションによるもので320万区画、スポラディックレジストレーションによるもので60万区画とされます。
人口が当時約1,560万人でしたので、登記済みの土地に住んでいる人は半分以下という事になります。
首都プノンペンの郊外であっても未登記の土地が多く、未登記の土地が様々な問題を引き起こしているという面もあります。様々な問題点については別途記載しています。
登記簿には3種類あります。
すなわち、所有権登記簿、区分所有権登記簿、永借権などに関する登記簿です。それぞれ概要を見てみましょう。
・区分所有権登記簿
各専有部分について1つの区分所有権登記が作成されます。
・永借権などに関する登記簿
所有権登記簿とは別に永借権、用益兼、地役権についての登記簿が作成されます。
これらの物権の変動が生じた場合は、その情報は所有権登記にも反映されることになっています。
登記は法律上で様々な効力を有しています。
不動産登記簿の記載は、推定力を有しているとされます。
ここでもまたいくつか法律用語が出てきます。法律用語の解説をしつつ、説明していきます。
登記の推定力とは、
「登記がある場合には、現実にその通りであると一応扱われる。」
という事です。
言い換えれば、「実際には本当かどうかわからないけれども、登記されているのだからそうなのだろう」、というニュアンスでもあります。
更に、登記簿記載の物権変動については、争う者が主張立証責任を負います。
物権変動とは、先にも述べた通り、所有権が発生、変更、消滅するなどを言います。
主張立証責任とは、訴訟においては自分に有利な事実などを主張しておかないと、事実が存在しないものとして不利益を受けるという事です。
つまりここでは、争う者が色々と立証していかないといけない、という事になります。
登記をしておくと、その権利が認められるという事になります。しかし、登記してあるものがおかしいからと言って実際に争う事になりますと、争う側で色々と証明していかなければならないという事になります。それだけ登記の力は大きいのです。
カンボジア民法における不動産の所有権に関する所でも触れましたが、「合意による不動産所有権の移転」は、登記しなければその効力を生じません。
当事者間で売買契約を締結しても、移転登記がなされないと登記の効力は生じないのです。これは第三者に対してではなく、売主・買主の間においても効力は生じません。
所有権、留置権、使用権、居住権を除く他の物権変動については、登記が対抗要件になります。この点は日本と同様です。
物権変動について登記の手続きを行う際は、権利証を提出しなければなりません。
権利証とは、システマティックレジストレーションの手続きによって発行される所有権証明書、または区分所有権証明書、スポラディックレジストレーションの手続きによって発行される占有権証明書の事を言います。
権利証には登記簿と同じように記載されます。それぞれ詳しく見ていきます。
所有権証明書には次の3つの情報が含まれています。
A 土地に関する情報(表面)
B 権利者の個人情報(裏面)
C 担保権に関する情報を含む権利に関する情報(裏面)
区分所有権証明書には次の3つの情報が含まれています。
A 敷地及び区分に関する情報(表面)
B 権利者の個人情報(裏面)
C 担保権に関する情報を含む権利に関する情報(裏面)
占有権証明書には次の3つの情報が含まれています。
A 土地に関する情報(表面)
B 権利者の個人情報(裏面)
C 担保権に関する情報を含む権利に関する情報(裏面)
こうして見ますと、いずれの証明書も同様の事が含まれているのが分かります。
権利証は、登記簿の記載を書き写したものでありますので、誤記載のおそれもあります。
また、物権変動の対抗要件はあくまで登記であり、権利証の交付では対応できません。
そこで、権利証を確認するだけではなく、登記情報を確認することも大切です。
確認するには、登記情報の閲覧や、登記記載事項証明書を取得するなどの方法があります。
以下がその方法です。
〈登記情報の閲覧・証明書の取得方法〉
・法令上は制限なく誰でも出来るとされています。
・管轄は地籍所と呼ばれる所です。
・しかし、法令上とは異なり実際には、権利証上の名義人、または、名義人から承諾書の交付を受けた者に閲覧などが制限されている状況です。
このように不可能ではないにしろ、ややハードルが高いのが実態です。
土地に関する規制についても知っておく必要があります。
日本でも地域によってビルの高さ制限などがあるように、カンボジアでも様々な土地利用計画があり地域によって規制があるからです。
政府では、首都プノンペンを始め、シェムリアップ、シアヌークビルの3つの都市において、建物の高さ制限などの利用制限を定めています。
また、都市および地方の土地利用については、基本的な枠組みが、土地管理、都市計画や建設に関する法律で規定されています。
最後になってしまいましたが、売主の情報を確認する事もとても大事です。日本でも得体の知らない売主や業者が相手だと不安に感じることがあると思いますが、海外だと更に文化や法律も違います。以下がポイントです。
カンボジアを始め、東南アジアでは必ずしも売主本人が交渉相手となる訳ではありません。自称名義人の親族や、代理人などを称する人物が交渉相手となる事も多いのです。
交渉が進んでから本人でないと分かって話がこじれるのを防ぐ為、取引の最初の段階で十分に本人確認を行う事が良いでしょう。
売主が本人かどうかの確認は、パスポートかIDカードによって行います。
IDカードとは、15歳以上のカンボジア国籍の自然人が申請すると交付されます。
カンボジアでは、婚姻後に取得した財産は夫婦共有となります。つまり、夫婦双方の同意がなければ売買できないという事です。
つまり、夫婦が相手の時は、夫婦両方の本人確認と、売買の意思の確認が必要です。
お気軽にお問合せ下さい