ここではカンボジア不動産法の概要を見ていきます。
カンボジアでは長年原則として外国人の不動産所有を認めていませんでした。
不動産を所有できるのは、
①カンボジア国籍の法人(カンボジア国内に営業拠点と登記上の事務所が有り、カンボジア人またはカンボジア国籍の法人が合計51%以上の議決権を保有する会社)
②カンボジア国籍の市民
のみとしていました。
カンボジアで外国人の不動産所有が認められるようになったのは、実は割と最近の事で、2010年からになります。「外国人区分所有法」が成立、施行されました。
これは、区分所有建物の専有部分に限り、外国人による不動産所有を認めるものです。以前は外国人による不動産所有は一切認められていませんでした。ただし、認められたと言いましても制限があります。
①地下階および1階の専有部分は不可
⇒つまり、2階以上にある専有部分は所有できるという事です。
②外国人の所有対象となる部分の合計床面積70%を超えない事
③経済特区、政府が定める重要都市、
および、その他の地域を除き陸の国境から30㎞以内の地域、
その他政府の定める地域に位置する区分所有建物の専有部分
を所有することは出来ない。
などがあります。
カンボジアの不動産法について学ぶにあたり、そもそもカンボジアにおいて、不動産とは何を指すのかをまず確認します。日本の不動産と比較しながら見ていきます。
日本では、民法で不動産を「土地およびその定着物」とし、不動産登記法では「土地または建物が不動産である」と定義されています。つまり、日本では土地と建物は別々に扱われている訳です。別々に扱われていますので、登記もそれぞれ行われます。
一方、カンボジアでも土地と農作物、工作物などの定着物・建物も不動産であるとしています。この点は日本と同様です。
しかし、原則、「土地と建物は別々にしない」としています。建物も土地の一部であり、独立して取引対象にならないという訳です。
例外として、賃借権や永借権などの権利の行使として建物が建築された場合には、別個の権利対象になりうるとしています。
よって、登記簿や権利証を作成するのは、土地や区分所有建物の専有部分に対してであり、建物については作成されません。
では実際に所有権を得たり、失ったりした時にどうなるか見ていきましょう。
結論を先に書きますとカンボジア民法では原則として、
①物権変動について意思主義を採用
②登記を物権変動の第三者対抗要件とする
としています。これらは日本と同じです。
これだけですと非常に分かりにくいですので、法律用語の解説もしながら詳しく説明していきます。
所有権が発生することなどを専門用語で「物権変動」と言います。
物権変動をまとめますと、
A 物件の発生・・・新築・購入など
B 物件の変更・・・上階増築など
C 物件の消滅・・・建物の倒壊など
という事になります。
意思主義とは、当事者が互いに「買った」「売った」と意思表示をするだけで良いという事です。つまり引き渡しや登記は必要ないという訳です。
ただ、実際には当事者間で特約を結び、移転時期を登記や代金支払いと同時する事を定めるなどの方法が認められています。
これは家を買ったのにローンがおりなかったので支払えないなどの問題を防ぐ為です。
①の「物権変動について意思主義を採用」というのは主に売買する当事者同士の場合です。対して②は第三者に関係することです。
第三者対抗要件とは、
「所有する権利を第三者に主張する為には登記が必要である」
という事です。
例えば、
AさんがBさんに土地を売った。その後、AさんがCさんにも同じ土地を売り、Cさんがその土地を利用している。
この様なケースを想定してみます。
この場合、当事者同士は売買の意思表示がされていますので、売買自体は成立しています。しかし、BさんとCさんの2人の関係はどうなるのでしょうか。
この事例ですと、このままではBさんはCさんに対して、「ここは自分が買った自分の土地だから出ていけ」とは言えません。CさんもAさんから土地を正式に買ったからです。
ではBさんはどうしたら良いかと言いますと、登記をしなければCさんに対抗できないという訳です。
これが②登記を物権変動の第三者対抗要件とする、という事です。
前項ではカンボジア民法の原則について述べました。
ここでは、日本民法とは大きく異なる点を確認していきます。
それは、
売買、贈与などの「合意による不動産の所有権移転」については、登記が無ければその効力が生じない。
という点です。
つまり、土地や区分所有建物の専有部分を購入する場合は、登記をしなければ不動産の所有権は移転しないのです。
「合意による売買」というのがポイントで、相続や遺産分割など、合意による売買によらない事での所有権の取得や、担保物件の設定などに関しては、前項の原則によります。
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