カンボジアの不動産市場の動向について見ていきます。
カンボジアの不動産市場は、次の要因で活発な状況にあります。
①高度経済成長期である事、②人口が増加している事、③ドル経済である事
実際に、2015年にはGDPの約19%を建設・不動産業が占めていました。これらの状況からカンボジアは投資先として魅力があるように見えます。
首都プノンペンに注目してみますと、特に土地の取引、コンドミニアムなどの集合住宅の開発などが積極的に行われています。
2015年とその翌年2016年を比較しますと、コンドミニアムの供給戸数は2倍ほどまで増加し、その後も更に増加すると言われています。
一方で、2016年第2四半期には、コンドミニアムの販売価格や、サービスアパートメントの家賃額平均は下落したという報告もコンサルティング会社からありました。
これらの状況を鑑みますと、2016年には既にコンドミニアムやサービスアパートメントはやや供給過剰気味ともいえる状態であり、2018年以降のコンドミニアム関係の市場は厳しくなるとの見方も出来ます。
今後も供給過剰の状態が続き、更に過熱しますと、①賃貸人が見つからない、②家賃の値崩れ、③セカンダリーマーケットが成立しない、などの問題が生じる可能性もあります。
セカンダリーマーケットとは、「流通市場」のことで、投資家間で売買が行われます。供給過剰になれば、売りたくても売れない、買い手が見つからないなどの状態になり、流通が停滞し、マーケットが成立しない状態となってしまう訳です。
では、コンドミニアム投資をする際の注意点を見ていきます。
大きく次の4点がポイントです。
①、②については、不動産開発の許可などを管轄する経済財務省がデベロッパーの取り締まりを強めていますので、数が減っていくとの見方もあります。
大切なのは、「コンドミニアムは登記簿や権利証の発行が義務であり、そうでなければ違法物件の可能性がある。」という知識を押さえておくことです。
登記簿・権利証の確認時のポイントについては後述します。
加えて、先に述べた通り、コンドミニアムやサービスアパートメントなどは供給過剰の状態でありますので、投資する時期や投資対象などを慎重に検討することが大切です。
コンドミニアムとは対照的に、土地価格については近年順調に伸びています。
しかし、土地投資に関してもトラブルを防ぐ為にいくつか押さえておかなければならないポイントがあります。
これらも、コンドミニアム投資同様に、土地の登記簿や権利証を確認する事、売主の本人確認を行う事など、事前に問題点が無いか調査することでトラブルを回避できます。
「ハードタイトル・ソフトタイトル問題」は、カンボジアの不動産取引において、最も重大な問題だと言われています。
ハードタイトルとは、権利証の事を言います。なぜこのような表現がされるかと言いますと、権利証に用いられる用紙が硬い(ハード)だからという事に由来しているようです。
一方、ソフトタイトルとは、権利証以外の書類の事を指します。こちらは柔らかい(ソフト)な用紙が使われていることに由来します。
ハードタイトルと異なり、ソフトタイトルは特定の書類を指すわけではなく、不動産に関して記載された権利証以外の書類を複数指します。
例えば、①スポラディックレジストレーションの受理書、②占有権譲渡契約書をサンカットやコミューンの長が認証した書面、③サンカットやコミューンが当事者の占有状態を証明した書類、などがソフトタイトルと呼ばれています。
カンボジアでは未登記の不動産が多数存在しています。その未登記の不動産はソフトタイトルによって取引されることが多いのです。
ポイントは、「ソフトタイトルだけでは不動産の所有状態を証明することにならない」、「複数枚発行できる」という点です。これにより二重譲渡による詐欺が行われるリスクが高いのです。
その背景には、権利証(ハードタイトル)の作成に費用や期間が生じてしまうという事情があります。
よくある手口として、「この土地には権利証はありませんが、その他のソフトタイトルの書面は揃っています。ソフトタイトルのみの取引も有効で、その方がお買い得ですよ。」などのうたい文句によって詐欺にあってしまうのです。
まずは、購入を検討している物件についてよく調査しましょう。
ポイントは、登記が済んでいる事、スポラディックレジストレーションの手法によって登記の作成をし、登記の所有者欄に買主の名義の記載を売買代金の決済の条件とすることです。
ハードタイトル・ソフトタイトル問題以外にも様々な詐欺が過去に発生しました。ここに判例や事件の一部ご紹介します。
原告が被告らからカンボジアにおける不動産の共有持分の売買であるとして、実態の伴わない金融まがい商品を詐欺的方法により違法に売りつけられた事案。
原告が、被告に騙されてカンボジアの未建設アパート売買契約の形式によって金品を支払わされた事案。
200人以上の被害者を出し、代表者に懲役10年の有罪判決が言い渡された事件。原野詐欺事案として最も規模が大きいとされています。
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