2018年のカンボジア成長率は7.5%
2019年06月07日

2018年のカンボジア成長率は7.5%

世界銀行が2019年4月に発表した「東アジア・太平州地域経済報告」によるとカンボジアの2018年の経済成長率は前年の7%を上回る7.5%だったということです。

成長の理由としては主にアメリカやヨーロッパへの縫製品や靴の輸出が伸びたことや内需の拡大が挙げられています。

また、2019年の予測としても7%を維持するのではとみられています。

 

縫製品と靴の輸出はカンボジア国内の輸出額の3分の2を占めており、前年比で17.6%の伸びをみせました。前年の伸びが8.3%だったので毎年成長を続けていることがわかります。

また、輸入も増えています。特に目立つのがバイクと建材資材の鉄鋼です。バイクは50%、鉄鋼は48%も増加しています。

 

この輸入増を背景に2018年のGDP比経常赤字は拡大し、9.7%から10.4%となりました。ただしカンボジアへの海外直接投資がその分を埋め合わせしているために2018年には30億ドルを超える勢いで対GDP比の13.4%になったとみられています。

外貨準備高も増加しており、2018年末時点で輸入額の6ヶ月分にあたる101億ドルになっています。

 

カンボジアの海外直接投資で特徴的なのは認可投資の4分の3が中国の資本だということです。

投資先は主に建設や不動産、観光など。製造業や農業は比較的少ないというのがチャイナマネーの特徴です。

特にカンボジアのリゾートエリアの開発が相次いでいて、これまでの風景とは一変した観光地となってきています。

プノンペンのほうでも一度頓挫した商業ビルの建設が中国資本によって建設再開されるなど、チャイナマネーによる建設ラッシュが起きています。

 

カンボジアの経済成長に関しては金融システムが課題と言われていました。しかし世界銀行によると最近は改善が見られているということです。

外貨預金高も順調に伸びていて、2018年で前年比の26.5%増となりました。

 

特恵関税の撤廃

このように成長が見られるカンボジア経済ですが、長期的に見ればさまざまなリスクも考えられます。

長期的に考えた場合に増加する海外直接投資に見合うだけの高い生産性を実現できるかどうか、また国内投資を伸ばすことができるかどうかがカンボジア経済の課題と考えられています。

国際競争力という点でみた場合にも電気料金が高い、熟練労働力が不足しているなどの問題点が挙げられます。

 

また、主な輸出先であるヨーロッパが特恵関税の撤廃を検討していることもリスクとしては挙げられます。

2018年のカンボジア総選挙ではフン・セン首相が率いる与党・カンボジア人民党が国民議会の議席すべてを独占しました。

しかしこれは最大野党であるカンボジア救国党や人権運動家の弾圧などの非民主的な手段によって実現したものであるとしてフン・セン政権は国際的にも批判をあびました。このようなことが背景としてあるためにEUはカンボジア政府に対して状況の改善を求めましたが議論は平行線をたどり、今年に入ってから特恵関税撤廃の手続きを開始したと発表されています。

しかしカンボジア政府はまだ強気の姿勢を崩していません。「特恵関税はいずれ廃止されるもの」と開き直っています。世界銀行は「特恵関税が撤廃されればヨーロッパへの輸出に影響が出るため対策する必要がある」という見方です。

 

中国資本との依存関係

また、中国との過度な依存関係も心配しておく必要があります。

カンボジアは不動産・建設セクターへの投資に加えて観光業でも中国人観光客に依存している形です。

これはつまり中国経済の成長によってカンボジアの経済状況も左右されるということです。

今後は建設セクターでの借り入れ増加にも警戒していく必要がありそうです。

                       

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